播種はリサイクル工程では3番目の工程である。スタートは採種で、いかに粘り強く良い種を多く採るかである。次は採種の済んだ苗を使って堆肥にして良い土作りである。
採種からは数か月のインターバルがある。良い再スタートが出来ると続く育苗工程で良い結果が出やすい。
播種工程において、良い苗の出発とはどんなだろう。先ず第一に色艶の良い健康な苗が一斉に全部発芽することだろう。
土はほっこらとしていて、なおかつ崩れにくいものが移植しやすい。
播種のタイミングは外さない方が良い。種の量に応じて蒔床容器や土の準備が変る。
播種の好適なタイミングはあまりない。結果が出るのは数週間後である。数週間といえば、季節はかなり移りすすんでいる。それからやり直すというのはその後の工程で苦労が強いられる恐れがある。
意識的にコントロールして、タネ・土・温度・湿気など
諸要素の好適条件を一致させてより多く萌芽させることが播種の根幹である。
播種の段階はまず発芽率を高めるための挑戦である。
そのためには、植物の性質を知り、萌芽・発根のための環境条件を、
整えなければならない。
草花の播種の方法として、花壇等へ直播という方法と播種床へ仮蒔きしておいて花壇等に定植する方法がある。さらに、仮播きした苗を定植しやすい大きさまでポットで育苗する方法がある。苗のリスク回避と開花までのタイムラグの活用上、最後の方法を 推奨したい。
苗箱の一か所だけに芽が出る。また苗箱からポットに移植が終了して土を捨てると種が大量に混じっていた、などの事態は「播種」の成功とは言えない。
一斉に殆どのタネが発芽するように蒔いて、管理することは難しい。まばらな潅水や日当たりや風当たり、苗箱を水平でない置き方をしている。等種々の原因でうまく行かないようである。
<註>
播種:タネをばらまく。蒔く:タネを土の中に埋める。というイメージですが、
言葉を厳密に区別していません。
採種から播種までにインターバルが生じる。保管中に、事故が起こることがある。 播く前に取り出してみると、虫やねずみに食われていたり、腐っていたりすることがある。 出来るだけ乾燥した、涼しいところに保管している。
播く前日に準備のために庭のテーブルの上にパンジーの種を出しておいたのが、風で飛ばされて、 袋ごと柴犬ゴン太に食べられたことがある。道理で、朝回収した排泄物がごつごつしていたと思った。 種は栄養豊富であることを忘れないようにしている。(写真は自分の机の横にぶら下げた種袋)
アサガオの種は播く前にコンクリートの表面にこすり付けて殻に傷をつける。湿気が入りやすいようにする。
しかもなお、一晩水につけておくのである。豆やかぼちゃも一晩水に漬ける。
これは私の思い込みかもしれないが、パンジー・ビオラは約1ヶ月前から、冷蔵庫の野菜室に保管しておく、偽装である。
秋蒔きであるが、冬の寒さを感じさせておき、播種とともに春と思わせ発芽率を上げるための準備である。
何れも、早期に一斉にしかも確実に発芽を成功させる手段である。
安全に保管する種袋についてはいろいろと試してみた。採種した種は種袋に入れて、枯れるのを待つ。
枯れた頃に取り出して、種を包んでいたものをはがしてさらにふるいをかけて純粋に近い種だけとする。
このように種袋からたびたび取り出して精製してゆく。
当初、種袋をコピー用紙で作っていたが、破れてしまい、種が漏れて困った。
安全に保管する種袋についてはいろいろと試してみた。採種した種は種袋に入れて、枯れるのを待つ。その後たびたび取り出して精製する。
かかりつけの医院から毎月頂戴する薬袋が一番強い。毎日開け閉めする袋だから、
なるほど堅牢な紙を使用しているのだった。
「蒔」という字が草冠に時と書く。
また、桜が咲いたら蒔くとか八十八夜に蒔きなさいとかいう慣わしがある。
その植物のライフのために適したスタート時季であるからだ。
タイミングをずらすと霜の害、高温、虫害、風雨、旱魃などのリスクがある。
播種しても発芽するまでは1,2週間掛かる。さらに移植までは数週間かかる。失敗した場合は
再度播種するが、遅れは決定的な打撃となる。したがって、慎重に多少前詰めで播種を行なう。(写真は8月~9月に保冷剤を入れて、パンジーの播種)
私は日本の平均的な気温地域に住む。
春から初夏に掛けて咲く草花は、秋蒔くと早春から咲き始め初夏まで長く咲くが、
春蒔きはスタートが遅いせいで、開花期間が短い。したがって秋蒔きを心がけている。
秋蒔きは冬越し苗の霜除けが要る。霜よけをルーズにするとしっぺ返しを食らう。
一度や二度の霜には負けない苗にするため、早期播種は魅力的である。
ただし、初夏蒔きは盛夏の高温、乾燥と秋雨の湿気というリスクを背負うことになる。
したがって、8月下旬から9月上旬頃の播種が最も多くなる。
この数年、ぱんじー等の播種には保冷剤を使っている。
蒔いた数時間の温度コントロールが20度前後、5時間程度必要との事を知り、挑戦することにした。
勿論、約一月前からタネを冷蔵庫の野菜室に入れておく。
段ボール箱の中に蒔床箱を三段に重ねて、その上に保冷材を置いて蓋をし、一晩置いた。
朝になって段ボールから取り出し、半日陰に置いた。
発芽はまずまずする。
パンジー、ビオラの播種は難しい。正月前に開花して、近隣に配布したい。地球温暖化の影響か、発芽温度の15~20度に下がってくれない。 出来れば9月初めから撒きたいが、撒いても発芽しない。タネやの情報では、適温が5時間必要とのことだった。
保冷器を使って、播種時季の仮想「秋」を作ってもその後が問題である。暑い日が続いたり、長い秋雨があると 成長は止まりやすい。そんな時ほど害虫が多い。 暑さには寒冷紗を掛けて、涼しい状態を作るが…。
1 | 小さな種 (ペチュニア・桜草等) | 皿型容器 (蒔床容器・ランチケース) |
2 | 大きな種 (朝顔・キンセンカ等) | ポット |
種まき容器はどのような物でも容器であればよいが、水はけと水の吸い上げがよいこと、タネから根が生えてくるので、最低20㎜~30㎜程度の深さが必要である。
これから始めようとしている人はぜひ150円位しているA4サイズの専門蒔床容器を購入していただきたい。強いていえば、小さな種は底の浅いランチケースを使用しても十分な結果が得られる。(写真は左からポット・播種容器・ランチケース)
ランチケースは透明の蓋付きなので乾燥が防げるが、密閉し過ぎても腐敗してよくないので、底だけでなく蓋にも5箇所程度、5㎜ほどの穴をあける。太目の釘で穴をあけてもよい。
上記1と2との中間形態として、種が大きくかつ少数で貴重な場合は1区画に1個の種をまくため仮蒔き容器として、市販の製氷皿を使うことがある。メーカーから製氷皿そっくりな蒔き床パレットが発売されている。
種蒔き容器を全部使い切った場合のバッファーとしてランチケースを使用している。
10枚入りを105円で販売している。ランチケースは経済的である。
種まき容器の場合は乾燥を防ぐために土の上に紙を敷くが、ランチケースの場合は紙を敷く必要がない。
ランチケースは蓋があるので、水と空気の流通のため、底と蓋に穴をあける必要がある。形が複雑なので洗うのが面倒であること。3回程使用すると、どこからともなくひび割れしてくる。どこまで辛抱して使うかということになる。
蒔床土は数週間水分の多い状態に置かれるため、腐敗菌類が含まれていない清潔な土が望ましい。
さらに、蒔床土は他の植物のこぼれタネが含まれていないことが望ましい。
従って、古い土はあまり好ましくないとされている。もしも古い土を使う場合は土を火で焼いたり殺菌剤を浸透させる方が良い。
市販の花の土1/3、パーミキュライト1/3、ピートモス1/3
それぞれをふるいにかけて混合して使用する。但し、市販の花の土は清潔にした古土に替えても良い。
最近、私はずぼらしている。100%古土を使用している。定植時にはバーク堆肥を補充しているので、保水性はかなりある。必要なタネは充実させて回収し、タネの回収対象でない花苗はコンポストに入れ、堆肥化している。こぼれダネの心配はあまりしていない。古土は乾燥保管しておいてシーズンが来ればふるいにかけて使用している。
種を蒔いて二週間そろそろ芽が出てきたのを見て、しまった、こぼれタネがあったのだと気がつくことが時にはある。蒔いた種の苗よりも、他の苗の方が多く出てきている。そのような場合、残念だがそのまま捨ててしまう。
古土を使って土づくりをする場合は土を採取する花壇のその場所の履歴を思い出さなければならない。間違っても、ペチュニアや桜草の鉢の捨て土を使ったりしないことである。
古土をリフレッシュさせるために花壇の土を焼いたことがあった。 焼くと有機物が燃えて変な匂いが立ち込める。髪の毛を焼いたニオイである。 近所迷惑になると家族に注意され、早々に取りやめた。
草花の種は比較的小さい。蒔床の上に満遍なく散布するため紙の上に種を載せて、震わせて落としながら端から端まで左右にスキャンして行く。 比較的大きく、間隔を広くする例えば15㎜間隔で蒔くには 何個の種を蒔けばよいかおよその見当をつけて予め紙の上に載せておくのが良い。(写真は紙の上に置いてスキャン)
大き目の種の場合は一つずつ種を置いて行く。 例えばキンセンカの場合およそ3cm間隔に置き播きする。
上記二つの方法の中間的なまき方を行うときがある。例えばマリーゴールドのように、
種が細長いばあいは、前者の方法で蒔いたら、種が重なっていることが多い。
重なり合った部分の種を手で置きなおす。
朝顔の場合はポットに2個づつ蒔く。種の大きさくらいの覆土をする。
2本発芽しても、1本の発芽でも構わない。そのままで使う。
種の分散を効率化するため砂、バーミキュライト等に予め分散させておいて蒔く方法がある。
種を混在させる砂等は蒔き土とは色目の違うものを使用する。
シニアは視力が落ち,手元が不確実なため細かい種の播種には適しているかも知れない。
元来、タネは種を広く拡散して繁栄させるため、風その他の力を借りるようになっている。従って、種を蒔くとき、ある程度風が吹いている方が分散してうまく蒔ける様な気がする。
風が一様に吹いている場合、種袋から直接蒔くことで、かなりうまくできる。
自分の手で分散させながらスキャンする場合は、まず蒔き紙の上に、種を載せる。紙を左右に振って種をこぼしながら移動する。蒔き土の上に、均等に蒔けずに、風に急に吹き寄せられて散ったり一箇所に固まったりする。したがって、風が強く吹いている最中に種まきをするのは避ける。どうしても蒔きたいときは室内か物陰で蒔く。
覆土は通常、蒔床土と同じ物を使う。したがって、蒔床土を残しておく。
まき方は手のひらに一握り分の覆土を持ち、指の隙間を空けて落としながら左右にスキャンする。
移植ごてで土を落下させながらスキャンさせても良い。土は湿っていると塊ができやすい。
一般的には覆土の厚みは小さい種ほど薄く、種が隠れる程度に。大きい種は厚く土をかける。(写真は古土(花壇の土)でフルイにかけて使用)
草花の種が発芽する条件として、光が必要というものがかなりある。例えばペチュニアやキンギョソウなどで、この場合、覆土は禁物である。
光好性の種にどうしても覆土したいときは、バーミキュライトの細粉を気持ちだけかける方法がある。
覆土が終了すれば、水を吸わせるため腰水につける。
表面まで湿ったところで、表面を平らにして乾燥を避ける意味で、細かいシャワーを掛ける。
秋まきは気温が高いので、殺菌剤を水槽あるいはシャワーの水に混ぜることがある。ただし、花壇の土を使用しない場合は不要だと思う。
光好種以外は湿気を保持するため紙で覆う方が手間がかからない。
覆土しない場合、潅水は種蒔き前がよい。
恥ずかしながら、草花の多くの種は好光性であることを長い間知らずに来た。どんどん覆土した。
桜草など、ごくまれに好光性種子があるとは知っていたが、数年後になって多くあることがわかって愕然とした。種を、天候を、土を恨んだことを恥じた。
”覆土は不要ですが、少しでよいからどうしても覆土したいという方は、バーミキュライトの細粉をかけて下さい”と説明があり、私はバーミキュライトの底にある細粉をつまんでばらまいたことがあり、発芽に成功した。バーミキュライトは雲母に似ていて、軽く、光を乱反射するのではないかと思う。。
播種後の容器は風通しの良い、すだれ等で直射日光を避けた半日蔭に置き、発根や発芽を促す。 温度も重要な要素なので、日中の高温・夜間の低温が甚だしい場合は配慮し、位置を変えたりする。
光好種の場合は湿気を絶やさないで、明るい日陰で発芽を待つ。(写真左はカンパニュラの播種後、右はその発芽)
1週間目頃から蒔床の表面を覆っていた紙を除けて観察する。 表面に少しでも芽が出れば、覆っていた紙を外し、半日陰に置く。 発芽が揃った頃に、日向に置く。 紙を外すタイミングが遅れると徒長しすぎて困ることがある。
発芽後は表面が乾くと、時々水槽に浸けて、
表面が湿るのを確認して引き上げる。
ランチボックスは密閉に近いため、むしろ過湿による腐食の恐れがある。
その場合、蓋の孔を広げるか、しばらく蓋を空けておく。
ポットは表面が乾くと水をかける。
種まき床で成長した苗の本葉が出始めた頃に、ポットに移植する。
ポットへの移植に付いては次節に触れる。
ポットに蒔いた場合は、本葉が五、六枚出た段階で正式にプランターや花壇に定植する。
蒔床を雨によってどれだけだめにしたことか。庇の下でも、吹き降りの場合は関係なく降り込む。
大きい雨粒は種や苗を掘り起こしてしまう。
大量の雨は、苗床を水浸しにし、低い場所に種や苗を流してしまう。
夜寝ている間に天気が急変して、嵐が来ることがある。 用心に越したことはない、嵐が来ても大丈夫な場所に蒔床を置くことが必要である。 ランチボックスは蓋があるので雨でも殆ど関係なく、安心である。 ポットの場合は比較的大きなタネであるため、覆土も深く、雨による影響は少ない。
蒔き床土に雑草のタネも混じっている。同じように発芽するチャンスに恵まれる。雑草の方が多い場合もある。見極めをつけて、早い目に抜き取る。成長してから抜き取ると根が絡んで本命も抜けてしまう。雑草は一本づつ抜き取る。効率が良いからと数本束ねて抜くと本命まで抜けることがある。